Compact Disc
Top > discography2 > 2020-2022 > DREAMWORKERS OF TIME
ATOMHENGE - ATOMCD31049 (2022)
ホークウインドの音楽変遷の中で、80年代初頭はNWOBHMのトレンドと同期する形でハード、メタル寄りの作風にシフト、90年代はクラブ系サウンドやオルタナティブへの接近などによりエネルギッシュにリフレッシュされたサウンドは、新しいファンを獲得しながらベテランバンドとしての貫禄を備えていきます。このボックスセットは、BBCがその時期のホークスのコンサートやスタジオライブをオンエアした素材を編纂したもの。85年のスタジオライブ、86年のレディング(既発)、88年のハマースミス、95年のスタジオライブでいずれもYoutubeや海外のファンの間ではテープやCDRなどで出回っていましたが、今回正規リリースとして日の目を見ることになりました。
3CD、クラムシェル、ブックレット。
DISC ONE BBC Radio One Friday Rock show Live at Reading Festival 24th August 1986
|
DISC TWO BBC Radio One In Concert Hammersmith Odeon, London 21th April 1988
|
DISC THREE BBC Sessions 1985 & 1995 Friday Rock Show session 1985
Mark Radcliffe session 1995
|
DISC ONE
86年8月のレディング・ロック・フェスの最終日のトリという大舞台。会場の熱気は声援からも伝わってきます。観客の期待に応える熱演で、BBC Radio1のFriday Rock ShowでOAされ、BBCアーカイブのCDリリースを行なっていたRAW FRUITSより92年5月にTHE FRIDAY ROCK SHOW SESSIONSというタイトルでリースされたことがあったもの。アンコールのシルバー・マシーンにはレミーがゲスト参加、ファンの間では名演として知られるタイトル。前年の黒剣ツアーが一段落して、メンバーは前年に引き続きデイヴ・ブロック(G/Vo)、ハーヴィー・ベインブリッジ(Key/Vo)、ヒュー・ロイド・ラントン(G/Vo)、アラン・デイヴィ(B/Vo)、ダニー・トンプソン(Dr)でセトリは既存曲を増やしたものに変更されていますが、ここでのリストはレディング向けのセットで押せ押せ曲の連続でステージ丸ごと収録されています。
Magnu/Angels Of Death オープニングは「絶体絶命」のあの曲。ブロックのカッティングからいきなり全開でスタート。ラントンの弾きまくりギターはこの頃の特徴ですね。曲はメドレーで同じくリフ中心の「死の天使」へ、ややテンポアップしたアレンジで突っ走ります、カッコいいですね。エンディング後のベインブリッジの呼びかけに応える観客も盛り上がってますね。
The Pulsing Cavern 黒剣の小曲、少しチルアウトさせて次の名曲へつなぎます。
Assault And Battery 「絶体絶命」のオープナー。ここでもイントロからラントンのギターがギラギラと弾かれます。
Needle Gun 『黒剣年代記』のシングルカット曲。
Master Of The Universe 続いてこの曲、一息も入れずにハードナンバーが続くのもレディングを意識してでしょう。
Utopia ダメ押し『チューズ・ユア・マスクス』の「アライヴァル・イン・ユートピア」。どこまで飛ばすんでしょうか(笑)。中間部はこの時期お決まりのベインブリッジのおどろおどろなボイスが入りますが、かなり短めにされアグレッシヴさを強調。
Brainstorm 間髪入れずにコレです。もう止まりません。サビの掛け合いも良し。
Dream Woker/Dust Of Time 前曲の終盤からSEの音声が被ってこのベインブリッジ曲に。「チューズ・ユア・マスクス」収録曲ですが、ここでは独時のひねったリフもハードに演奏され、ベインブリッジのボイスもいつになく激しい。その後『レヴィテーション』の「ダスト・オブ・タイム」になり演奏後にブロックのThank you, Good night folks!
Assassins Of Allah アンコールタイム、歓声が凄いです。ハシシもイントロからドライブ感満点、「クォーク・ストレンジネス・アンド・チャーム」の定番曲。デイヴィがリードボーカル。
Silver Machine 最後はレミー、ダンピーが参加しての大ヒット曲。ダンピーはこの日自身のバンドでもレディングに出演していました。モーター・ヘッドは出演していないので、この1曲のためにレミーに出演してもらったようです。11分まで引き伸ばされた演奏。
全編ハードでイケイケの演奏のホークスは珍しいですが、その点で非常に楽しいディスクです。
DISC TWO
続いての音源は88年4月のハマースミスオデオンでのギグをIN CONCERTでOAされたもの。メンバーはDISC ONEのレディングと同じ5名。この時期は85年の『黒剣年代記』以来久しぶりのスタジオ録音アルバム『未知なる写本〜ゼノン・コーデックス』を4月25日にリリースするタイミングで全英ツアー(4/4〜5/1)を行っている時のもの。ハマースミスは4/21と22連夜出演。セトリは黒剣、写本からのものが中心。実際はBBCでOAされた曲以外にも演奏されていましたが、放送時間の都合で抜粋となったと思われます。
Utopia このタイトルはArrival In Utopiaの省略表記で使用されることが多く、ここでの演奏も実際はArrivalです。電子音に続いてシンセベース、ギターのリフからスタート。ラントンのギターが以前よりは抑揚がついて、出しゃばり感が減った感じです。
The War I Survived 鶏の鳴き声のSEからドラムロール、写本の快速チューン。リードボーカルはラントン。
Heads 打って変わって諸行無常系のスローナンバー、ボーカルはブロック。同じく写本から。同じ曲調のまま後半テンポアップし、またスローに戻ります。
Shot Down In The Night シンセ音やSEを挟んで『ライヴ'79』のシングルチューン。ライブ映えするいい曲ですが、しばらく演奏されてなかったところ、この年はセトリに加えられました。
Tides 同じく写本の静かな小曲。次の曲へのつなぎ。
Wastelands Of Sleep ブロックの諸行無常感が炸裂する写本の名曲。『絶体絶命』の「狂人」を思い起こします。
Moonglum 前曲のイメージを引き継ぎラントンの名曲。エルリックの介添え人であるムーングラムを歌ったもの。
Sonic Attack シンセシーケンスや電子音、ベインブリッジを中心にボイスの掛け合い、ドラムロールが緊張感を醸し、リズムが加わったアレンジで進行。
Rocky Paths 『ソニック・アタック』のラントン曲。この時期はラントンを立たせたナンバーが多いようです。ライブ映えする曲でもあります。
Brainstorm ボーカルの掛け合いから始まる新しいアレンジ。中間部はシンセベースのシークエンスにギターやドラム、電子音、のアドリブパートを挟み最後はAメロに戻ります。いずれもDISC ONEのレディング同様ハード面が強調された演奏です。この日の 実際のセトリは以下でした。オーディエンス録音のフルセットを聴いてみましたが、その他の曲も良いので収録して欲しかったです。
DISC THREE
85年8月にOAされたFriday Rock Showのスタジオライブ(収録したのは同年7月19日Media Valeスタジオ)。時期的には『黒剣年代記』を収録する少し前。ドラマーは6月に前任のクライヴ・ディーマーが離脱し、ダニー・トンプソンが加入したのでDISC ONE/TWOと同じラインナップ。
Assault Of The Hawks 『絶体絶命』の「襲撃、砲門の嵐」、メドレーでNight Of The Hawksが演奏されます。
They’ve Got Your Number ラントンのプロジェクトLLOYD LANGTON GROUPの同年リリースされた2ndアルバムNIGHT AIR収録曲(そちらでのタイトルはGot Your Number)。この曲は85年の黒剣ツアーまでの期間、セトリに組み込まれていました。
Magnu 3曲がコンパクトにまとまっている演奏。Magnuはいつも通りの演奏。ベースのリフからDreamworkerへ。ベインブリッジの語りが入りますがすぐに次のDust Of Timeになだれ込みます。
続いて少し時期が離れて95年の同じくMedia Valeスタジオでのテイク。前年までのトリオ編成に行き詰まりを感じていたバンドはフロントマンにロン・トゥリー(Vo)加入させ、サポートギタリストとしてジェリー・リチャーズを加え、95年4月にUSツアーを実施。その後6月に英国のマン島のフェスに参加。そして7月にこのセッション。この後、新作『エイリアン4』のレコーディングに入るタイミングですので、そこに収録されることになる「死の罠」(再録)をはじめとした曲も演奏されています。リチャーズが参加しておらず、ブロック、デイヴィ、チャドウィック、トゥリーの4人編成。
Right To Decide トリオの曲ですがここでもほとんどトリオで演奏されているようです。
Death Trap 定番曲をセルフカバー。
Wastelands Of Sleep アルバム『エイリアン4』ではWastelandsというタイトル。シンセ主体のマイナー調曲。
Are You Losing Your Mind? 同じく『エイリアン4』に収録されるナンバー。トゥリーのシアトリカルなボイスが印象的。
Assassins Of Allah エイリアン4ツアーでも演奏されたハシシとシークエンスが繰り返されるインターバル曲Space Is Their (Palestine)をThe Dream Goes Onというタイトルにしているようです。ライブアルバム『ラヴ・イン・スペース』では最終曲でAssassinsというタイトルでした。ここではハシシが歌われた後、反復シーケンスにパーカッションの演奏が入りおなじみのアラビアンな旋律が繰り返されます。そしてハシシのボーカルに戻り終了。なおDreams Goes Onは正確には『ザ・ビジネス・トリップ』に収録されたトラックで『エイリアン4』のAre You Losing Your Mind?のアレンジ違いの曲なのですが、ここでは上記のようにSpace Is Their (Palestine)を指していると思われます。
オリジナルUK盤&日本盤ディスコグラフィ2 Compact Disc 2020-2022に戻る
2022/05/07 update