Analog Disc
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UNITED ARTISTS / UAG 29202 (1971)
3面開き特殊ジャケです。開くとタカ(Hawk)の形になります。内側はモノクロ。プリントは前期 E.J.Day Group、後期 Garrod and Lofthouse Ltd。
このタブロイド誌のようなブックレット THE HAWKWIND LOG が添付されています。時期によって青っぽいインクのもの(初期)、黒いものがあります。
UNITED ARTISTS 初回レーベル。マトリクスはA-1U、B-1Uから。両面1Uは比較的レア。
前期/後期レーベル。後期はロゴの脇にregisteredを示すRマークが追加され、全てのクレジットの書体が変更されます(75年のROADHAWKSまでのアルバムは全て同様にRマークなしの前期、Rマークありの後期が存在)。またROADHAWKSなど後期の書体でRマーク無しも存在しており、それはおそらく前期と後期の間の時期のものと思われます。
外周部のカンパニー表記は 初期が LIBERTY-UNITED ARTISTS RECORDS、次が UNITED ARTISTS RECORDS、その次は EMI RECORDS の表記へと変遷します。
Side 1
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Side 2
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その音楽、精神性、パッケージも含めホークスの現在まで貫かれているコンセプトが、極めて明快に提示された記念碑的作品。詩人、朗読のロバート・カルバート、デザイナーのバーニー・.バブルス、ダンサーのステイシアの名前もクレジットされており、周辺アーチストを含んだ創作集団としてその全容が姿を現します。カルバートはニックの紹介でホークスに接近し、何度かステージにも上がるようになってきました。そのカルバートがコンセプトを担当し、その後のホークウィンドのテーマとなるSFからの影響やスペース・ロックの概念を初めて具現化したアルバムとして、ホークウインドの初期黄金期の始まりとなる作品です。ついに英チャート上位にランクされロック史に残る印象的なアルバムで、スティーヴン・ウィルソンもフェイバリットに挙げています。
この71年はホークス史上最多ギグを行った年で、その回数は130回を超えました。ベースのトーマス・クランブルがレコーディングには一回も参加せず脱退し、代わりに元AMON DÜLL IIのデイヴ・アンダーソンが加入。一時ディック・ミックが抜け、替わりにミキシングを担当
していたデル・デットマーがステージに立つようになりました。その後ディック・ミックが復帰し、2名の電子音奏者となった時点でこのアルバムが収録されました。前作のリードギタリスト、ラントンが脱退していたため、ギターはブロックが全て担当。もともと自分は上手いギタリストではないと公言していたブロックは、独自のソロフレーズを展開し始めています。United Artistsはジャーマン・ロックの先進的なバンドアモン・デュールIIやノイ、カンなどと契約していたことから、アンダーソンのホークス加入やブロックがノイのUK盤のライナーを書くなど、この段階でジャーマン・ロックのスピリットが吸収されていたことも注目すべき点だと思います。
このアルバムはYou Shouldn't Do Thatや名曲Masters Of The Universeが収録されています。次作DOREMIのように広大な空間を感じさせるというよりは、パノラマ的音像が特徴的。これは各楽器のリバーブのかかりが低いためかと思われます。モノクロームでメタリックな音塊という初期ホークスの真骨頂が炸裂。反復リズムにサックス、フルート、ギターがうねるソロを続け、シンセの電子音がバックに流れる定番のスタイルが完成。アコギをかき鳴らしたダウナーなナンバーとの対比でメリハリをつけています。
オープニングは低音の唸る電子音から始まるといういかにもSF的なSEからスタート。ギターのカッティングにベースリフがかぶさり、ギターの歪みが大きくなり盛大に進行開始。宇宙船ホークウインド号が宇宙を突き進むがごとくひたすら同じリズムが繰り返されます。フリーキーなサックスソロ、should't do thatというつぶやきがリピートされそこにニックのyou'er getting nowhere, you're getting no air, you're getting awareなどの合いの手が呪文のように歌われていきます。一部にブレイクはあるもののアップテンポの中リフが繰り返されます。この繰り返しがある種の恍惚感を生み出していくホークスのスタイルが、ここで完成されたと言えるような曲。前作でも同様に繰り返し演奏は展開していましたが、リフの格好良さやキレは格段に良くなっています。この進化はベースのアンダーソンの役割が大きいように思います。
15分に及ぶオープニングナンバーのあと、ゆったりとしたテンポのYou Know You're Only Dreamingはそのタイトル通り、夢の中を漂うような浮遊感のあるテーマが印象的で、この半音階が下がるモチーフはのちに様々な曲の一部に使われることになります。ボーカルはデイヴ。
B面に移っての1曲目Master Of The Universeはタイトル通りふてぶてしいリフが印象的な曲で、ホークスの定番曲になります。ニックがリードボーカル。
打って変わってアコギのアルペジオ、海鳥の声のような電子音に導かれるブルースはブロックの弾き語りWe Took The Wrong Step Years Ago。中間部、アコギがかき鳴らされリズムが入って盛り上がりを見せ、また歌唱パートが戻り、静かに終了。この曲も後年よく演奏されるようになります。
Adjust Meは決まったテーマを持たないインプロ風の曲、SEや変調したボイス、いくつかのフレーズで構成。後半時はジャムの演奏のテープ速度を上げていき途切れて終わります。
最終曲Children Of The Sunは引きずるようなアコギとエレキの演奏にニックのボーカル、フルートのソロ。3分程度でフェードアウトですがヒッピー文化を象徴するような印象的なタイトル。
このようにアルバムは全体的に印象的な曲で埋められ明確なスタイルの提示、メッセージ性の感じられる作品となりました。ジャケット、カルバートによるHawkwind Logブックが内容のイメージをより広げる効果を果たしています。
なおジャケットではタイトルがXIN SEARCH OF SAPCEとなっており、Xを最初につける場合とそうでない場合があります。レーベル面は初期プレスでもXは入らず。ただしリリース時英国の広告ではXINと表記されるも、USでのプロモーションではXなし。その後の各種コンピレーションでもX無しとなっています。そのため現在はX無しが一般的。discogではX IN SEARCHとしてXを付与した形にしています。
【HAWKWIND 1971】L to R: Dave Anderson - Dave Brock - DikMik - Terry Ollis - Nik Turner
アルバムにはDel Dettmarも参加。
ハードロードのギグの評判は上々で、ステイシアのダンスと共に話題が広がり、その甲斐あってか、このアルバムは全英18位のスマッシュヒットとなり、アンダーグラウンドヒーローとして一躍英国内にその名を広めました。作家マイケル・ムアコックもこの71年、初めてホークスのステージに参加、朗読をしました。またこの頃からオリスがドラッグの過剰摂取でステージに立てないことが頻発、PINK FARIESのツインクやTHE PRETTY THINGSのヴィヴ・プリンスなどが代役をしたとのこと。
アルバム収録後、利益最優先の姿勢が他のメンバーに嫌われたアンダーソンがクビになり、デットマーが連れてきたSAM GOPALというバンドでギターをプレイしていたレミー(正式名イアン・キルミスター)がその後釜として加入します。
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2019/08/18 update