Compact Disc/Blu-ray
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ATOMHENGE - ATOMCD111053 (2023)
1973年にリリースされたホークウィンドを代表するアルバムSPACE RITUAL(邦題「宇宙の祭典」)の発売50周年を記念したボックスセット。1973年オリジナル版のリマスター、2023年新ミックス(2ch&5.1ch)、元になった1972年SPACE RITUALツアーの2公演分を収録。加えて新たに発見された1公演分も収録。ホークウインドの長い歴史の中で、最強の黄金期となった燦然と輝くSPACE RITUALツアーを俯瞰し再構築した50周年の記念碑。コーディネートはATOMHENGE設立者のマーク・パウエル、リミックスは名匠ステファン・W・テイラー。
SPACE RITUALの音源は全て出尽くしたと思われていたのですが、公演をほぼ収録したマルチトラックテープが現存しているとは想像したこともありませんでした。EMIのディレクターだったナイジェル・リーヴ氏の発言にもそのようなものがあるとは言及されていませんでした。しかしながら、2007年EMIからリリースされたCOLLECTOR'S EDITIONではノーカット版のBrainstorm、Welcome To The Futureが収録されたことから、ステージ丸ごと収録した元素材が現存していることの証左でもあったわけです。この50周年を記念したセットには、ブロックの自宅から発見されたサンダーランド公演を含め3日分のステージの様子をほぼフルに捉えた音源が収録されました。その価値は計り知れないと思います。
CD1/CD2は73年リリースのオリジナルのリマスタリング。このオリジナルは72年12月22日のリバプール、12月30日のロンドンの2公演から選抜、編集し構成されたもの。CD3〜CD8は3公演それぞれを丸ごと収めたもの。CD9/CD10は今回S.テイラーが再構築した宇宙の祭典リミックス。そしてブルーレイにはそのリミックス版の5.1chサラウンド、2chハイレゾを収録しています。

10CD、Blur-ray Disc。厚手のペーパーボックスケース。
内容物、上の2つがディスクを収めているペーパーケース。中身は下の画像の通り。真ん中はブルーレイディスクの収められたペーパースリーブ。
左下はブックレット。右下は宇宙の祭典ツアープログラムのレプリカ。

ディスクはこのように収められています。


ブックレットはロブ・ゴッドウィンによる当時の詳細な経緯や情報、このリリースへの賛辞が記載されています。写真も多数掲載、後半は別添のツアープログラムのテキストも掲載。


マスターテープの収められていたケースなども掲載。
| CD ONE “Space Ritual” The Original Album Remastered
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CD TWO “Space Ritual” The Original Album Remastered
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| CD THREE Liverpool Stadium 22nd December 1972 New Mix
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CD FOUR Liverpool Stadium 22nd December 1972 New Mix
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| CD FIVE Locarno Sunderland 23rd December 1972 New Mix
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CD SIX Locarno Sunderland 23rd December 1972 New Mix
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| CD SEVEN Brixton Sundown, London 30th December 1972 New Mix
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CD EIGHT Brixton Sundown, London 30th December 1972 New Mix
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| CD NINE Space Ritual 50th Anniversary Stereo Remix by Stephen W Tayler
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CD TEN Space Ritual 50th Anniversary Stereo Remix by Stephen W Tayler
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DISC ELEVEN Blu-ray
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CD1、CD2は1973年に発売された最初の「宇宙の祭典」のマスターテープからリマスタリングしたもの。マスタリング・エンジニアはベン・ワイズマン。72年12月22日のリバプール・スタジアムと12月30日のブリクストン・サンダウンでの演奏から選曲。今回それぞれの元テイクが収録されたので、どの曲がいずれのものか判明しました。さらに編集されているテイクも今回明確になりました。
Earth CallingからLord Of Lightまでがブリクストン。
Black CorridorからElectronic No.1までがリバプール。
Orgone Accumlatorがブリクストン。
Upside DownからSonic Attackまではリバプール。Brainstormは実際の演奏から編集され4分半短くなっています。
Time We Left This World Todayがブリクストンでイントロと中間部がカットされ4分近く短くなっています。
Master Of The UniverseとWelcome To The Futureがリバプール。Welcomeが編集され40秒ほど短くなっています。
今回、元音源が収録されたので、正確に比較できたことで、2枚目に関しては上記の編集がされていることが今回判明しました。73年のオリジナル版のジャケに記載の通り、Brainstorm、Time We Leftは編集され、さらにWelcome To The Futureも編集されていたことが明確になりました。
CD3、CD4はリバプールの元音源。ブックレットにレコーディングテープのリールを収めた箱の写真が掲載されており、そこにトラックリストが記載されています。ライブ収録は16トラックテープだったことが判明。ギター、ベース、サックス、シンセ、発信器に各1トラック、ドラムはバスドラ、スネア、タム、ハイハットなど4トラックに割り当て、ブロック、レミー、ターナー、カルバートにボーカル用として各1トラック、オーディエンスに1トラックというような振り分けでレコーディングされています。
Earth Calling 今回、3公演とも出だしから長めに収録されており、発信器やギターによるノイズと合わせてシンセの無調風な旋律が流れていたことが分かります。デットマーのVCS3での演奏と思われます。これが嵐の前の静けさ的ムードを高めているように思います。このテイクではThis is earth calling..という呟きがイコライジング通した声など含めて複数人が発しています。オリジナルに採用されたブリクストン・テイクと比較するとやや印象が弱い感じがあり、Born To Goの出だしへの盛り上がり感がやや弱い印象。ブリクストンが本編に採用されたのが分かります。
Born To Goは中間部のワウのかかったギターソロとベースソロとの掛け合い部分の違いなどを楽しめます。なお尺自体は3公演とも30秒以内の違いでほぼ変わりません。
Down Through The Night ブリクストンと比較するとやや勢いやノリが足りない印象。
Lord Of Light ベースに勢いがつき始めて、かなりノリの良い演奏。ブリクストン・テイクと甲乙付け難い演奏。
Orgone Accumulator 後半の即興部分がやや悠長な感じ。
10 Seconds Of Forever、Brainstormはオリジナル版に採用されていますが、Brainstormの元テイクはノーカット版。中間のアドリブパート、終盤のスローテンポパートが切れ目なく演奏されています。
Time We Left This World Today このテイクはCOLLECTOR'S EDITIONにボーナス収録されたものと同じで編集なしの完全版です。ブリクストン・テイクと同等の熱演。
Welcome To The Future オリジナルではカットされた中間部のブロックのアルペジオ部分が切れずに入っています。確かにここは若干間延びしている印象はありますので、オリジナルの編集はありかなと思います。この後歓声に続いて、アンコール・コールにつながります。足踏みの入った長めのコールがそのまま収録されています。
You Shouldn't Do That このテイクは前トラックからつながって演奏されるもので、COLLETCTOR'S EDITIONにも収録されていたもの。22日なので、ターナーのMerry Chiristmas!の声が聞こえます。
CD5、CD6はブロックさん宅で発見されたサンダーランド公演の初出テイク。以前、このテイクの存在はEMIのディレクターによって語られていましたが、EMIには質の悪い素材しかなかったそうです。今回発見されたものは他2公演同等の質のものです。
Eatrh Calling 他2公演同様、シンセの冷ややかな旋律、ギター、電子音のノイズ。This is earth callingの呟き。3公演中最長の3'10"収録。良い感じです。
Born To Go リズムのキレが良く一体感もあり、なかなかの好演。電子音の絡み方もカッコいいです。個人的にブリクストンより良い演奏に思えます。
Down Through The Night ボーカル後の演奏にやや乱れがあり、他2公演より少し短めに終了します。
Lord Of Light 他公演同様ノリの良い演奏。ブロックのボーカルが若干上ずっている感あり。
Electronic No.1 3公演中最も長く4分程度、このような即興は毎回かなり違ったものになりますね。
Orgone Accumulator 中間部から後半にかけてギターが休止し、サックスのフリーキーなソロが展開しますが、サックスと絡むようにシンセもしくはスキャット風の裏声が聴こえます。
Brainstorm この曲はどのテイクもカッコいいですね。さすが名曲。終盤のスローパートも演奏されています。
以降終盤までは、他公演と大きな違いはないようです。Sonic Attackのような即興曲、各曲のアドリブパートの違いなどは楽しめます。どの曲も他公演よりほんの少し短い尺となっています。テンションが低かったのかな。
サンダーランド公演のテープにはアンコールのYou Shouldn'tは含まれていません。おそらくここでも演奏されたと思いますが、レコーディングされなかったのかもしれません。
CD7、CD8はロンドンのブリクストン。
Earth Calling オリジナルに採用されたテイクで、やはりここでの演奏が一番かっこいい演奏。
ここからLord Of Lightまでオリジナルに採用されている通り、怒涛の演奏が続きます。ミックスの印象がかなりオリジナルと異なります。リードボーカルやハモリボーカルはオリジナルの方がくっきりしていることがわかります。ステファン・W・テイラーのミックスは塊感を重視したものかと思います。ブロックのギターを右チャンネル寄りにしているところはオリジナルと同じですが、やや中央に近い右寄りになっています。
以降はオリジナルにはリバプールが採用されています。大きく印象は変わりませんが、多少リバプールの方がノリが良い印象。即興ノイズ大会のElectronic No.1はそれぞれ違います。
Orgone Accumlatorはこのブリクストン・テイクがオリジナルに採用されています。
この次のUpside Downと10 Seconds Of Foreverは収録されていませんが、元素材にも録音されていないとのことです。
Brainstorm このブリクストン・テイクは非採用ですが、やはりここでも破壊力抜群のトリッピーな演奏です。出だし直前にシンセの反復音が聞こえます。右にブロックのギター、左にターナーのサックスを定位させてそれぞれのアドリブが堪能できます。演奏時間はリバプールより2分ほど短いです。終盤は他公演同様、スローパートになります。
Time We Left This World Today 1973年オリジナルに採用されたテイクですが、そちらでは出だしのリフを30秒程カット。スネアが入ってくる時のフィルインが良いのですが。また中間部のアドリブパートも削られています。1stアルバムのパラノイアのフレーズが演奏されていたりします。このパラノイア・アレンジはどの公演でも行われています。
Master Of The Universe リバプール・テイクだとホワイトノイズの轟音にブロックのマシンガンギターがかぶってくるカッコ良さがあるのですが、こちらはそこが少し弱い感じです。そこ以外はブリブリドライブ全開。
Welcome To The Future ややタメが少ない感じですが、ガツンとくる終止音は同様の迫力。
You Shouldn't Do That アンコールコールを待たずにすぐに演奏されます。このテイクはROADHAWKSに収録されたテイクです。なおROADHAWKSでは中間部を30秒程削っていますので、それの完全版は初出。中間部のレミーのベースが強烈な迫力。年末の千秋楽ということで終了後の挨拶でHappy New Year!と言ってます。長いツアーをやり切ったという感じが伝わってきます。
CD9、CD10は今回S.W.テイラーによって再構築された2023年リミックス版です。基本、各トラックの選出は1973年オリジナル版と同じです。
各曲は今回の元音源(CD3/CD4/CD7/CD8)でのミックスを並べています。その中で1973年オリジナルと違うのは以下の点です。
Earth Calling イントロの出だしが少し前から入ってきます。
Brainstorm ノーカット版。これはCOLLECTOR'S EDITIONと同じですが、今回はS.W.テイラーリミックスです。
Time We Left This World Today ノーカット版、と言いたいところですが、何とオリジナル版同様イントロの一部をカットしています。しかし中間部はカットされていません。なぜ、ここ編集する必要があったのか全く分かりません。この編集がなければ、初のコンプリート版と言えたのですが。。まぁ、確かに長いイントロではありますが、本来の演奏のままで良かったのではないかと思います。
Welcome to The Future リバプールのノーカット版です。
You Shouldn't Do That アンコールとしてブリクストン・テイクを入れています。前トラックのWelcome To The Futureはリバプールなので、そのままリバプールのアンコール・テイクを入れず敢えてブリクストン・テイクとしています。確かにこちらのテイクの方が良いと思います。
ということで、今作のリミックス再構築版も上記Time We Leftのイントロ数十秒カットの編集があり、コンプリートとは言えないものでした。そこにこだわる必要も、もはやないとも思います。そもそも2公演からセレクトしていますので、その時点でライブ完全再現ではないですし。その点からこの2023年リミックス版がコンプリートと言って差し支えないと思います。
CD9、CD10の50周年記念リミックスをベースにした5.1chサラウンド、ハイレゾ2chを収録したブルーレイ。サラウンドは前方にリズム隊、ボーカル、ギターを配置。ギターは前方右メインですが、後方でも鳴っています。後方は主に電子音を割り振っていますが、状況に応じて前でも鳴り、前後左右パンし浮遊感を演出。フロントセンターにはボーカル、ベース、ドラムも入っています。サックス、フルートは電子音同様前方後方で取り囲むようにしています。宇宙の祭典らしい音のパノラマ感が楽しめます。ホークスのように没入感に浸るような音楽はサラウンド向きだと思います。画面はアルバムカバーの各面をスライド上映しています。
ブックレットには90年代にカナダでGRIFFIN MUSICを設立し、ホークスのCDをリリースしたロブ・ゴッドウィンによる詳細な解説が記載されており、資料として詳しく紐解かれています。その文章の終盤で日本のNHK-FMで「宇宙の祭典」がオンエアーされたとの記載があり、いろいろ調べたのですが、確証は見つかりませんでした。ゴッドウィン氏に直接確認したところ、当時の世界のラジオ局の放送リストのようなものに2晩に分けて放送されたと記録があったとのことでした。その情報の出所は紛失しているとのこと。ただ、ネットでも放送されたとのコメントもあるので、信憑性は高いです。
このセットのリリースにより、今まで不明だった収録場所詳細、編集箇所などが全て明らかになり、改めて73年の宇宙の祭典ツアーの俯瞰ができることになりました。この貴重な記録をじっくり再体験できるセットです。
・オリジナルLP盤(1973)のレビュー
・国内初回LP-東芝音楽工業盤(1973)のレビュー
・国内再発LP-キングレコード盤(1982)のレビュー
・CD初回版EMI premier(1996)のレビュー
・EXILESさんのCDレビュー
・COLLECTOR'S EDITION(2007)のレビュー
・国内初回CD-EMIミュージック・ジャパン盤(2010)のレビュー
・国内再発CD-WOWOWエンタテインメント盤(2015)のレビュー
・このアルバムの国内盤「宇宙の祭典:50周年アニヴァーサリー・デラックス・11ディスク・ボックス・セット・エディション(2023)のレビュー
・50th Anniversary 2CD REMIX EDITION(2023)のレビュー
・上記の国内盤「宇宙の祭典:50周年アニヴァーサリー・2CD・ニュー・ステレオ・リミックス・エディション(2023)のレビュー
・50th Anniversary VINYL EDITION(2023)のレビュー
・50th Anniversary Blu-ray AUDIO EDITION(2025)のレビュー
・SPACE RITUAL VOLUME2(1985)のレビュー
オリジナルUK盤&日本盤ディスコグラフィ 2023-2024
2026/01/08 update