Analog Disc
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GWR - GWSP 1 (1986)
前作『THE CHRONICLE OF THE BLACK SWORD』(1985)リリースに伴う全英ツアーのハイライト、ハマースミス・オデオンでのステージを収録した2枚組ライブアルバム。80年代ホークスのハード&メタル路線のピーク的作品。全編ハードな演奏で押しまくっていて、ライブで本領発揮するホークスらしくスタジオ・アルバムの数倍のアグレッシブさスリリングさを楽しめます。マネージャーだったダグ・スミスが興したレコード会社GWRからのリリース。ムアコックがダグ・スミスに不信を持っておりムアコックの希望で彼の出演部分は削除されました。それ以外にも一部の曲は収録時間の制約から未収録でした。これらは後に他レーベルからのリリースに収められることになります。

シングル・ジャケ、インナー無し。せっかくの正規リリース2枚組なので、見開きジャケにして欲しかったですね。当初はこれに10ページのブックレットが付けられる予定でしたが、GWRサイドが許可しなかったとのこと。恐らくGRIFFINレコードのCD版に添付されたブックレットがこれであったと予測できます。

シングルカバーに2枚のLPが納められるという廉価版のような仕様。

初期リリースの一部にはツアープログラムが添付されていました。

裏ジャケ。製造はドイツとなっています。カバーイラストはダンカン・C・ストールという人。
Side 1
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Side 4
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86年は散発的なギグやフェス参加などはありましたが目立った活動が無かったホークス、11月と12月にUKツアーを行います。THE CHAOS TOURと題されビデオも収録されました。それに合わせて11月に待望のニューアルバムをGWRレコーズからリリースします。GWRはマネージャーのダグ・スミスが設立したレーベルです。上記しましたように、ダグ・スミスと係争中だったムアコックが自身の参加部分を削除するように要請したため、彼の参加した部分はこのリリースでは聴くことができません。同じくGWRからレコード・リリースをしていたMOTÖRHEADのレミーもスミスに対して非常に不満を持っていました。このアルバムの体裁がバンド側の意向に反して非常に簡素な作りというのも、スミスの指示かと思います。そういった点でこの頃のスミスはアーティストの意向と対立していたと思います。
内容は前年のTHE CHRONICLE OF THE BLACK SWORD TOURのライブ・アルバム2枚組。このツアーのビデオは先行リリースされていましたがレコード化はこのリリースが初めて。
アルバムがリリースされた当時、黒剣ライブが聴けるということで非常に興奮しました。録音はツアーのハイライトである85年12月3、4日の2ナイト行われたハマースミスでのステージから選別。前述のビデオもここでの収録です。このリリースでは朗読部分が大幅に削られた分結果として演奏のアグレッシブさが強調された形になっています。演奏はしっかりしており、すべて計算されたかのようなカッチリしたアレンジとなっています。各楽器のバランス、音質もかなり良好で優れた録音です。レコーディングはあのストーンズのモービル・ユニットが使われたとのこと。
メンバーはアルバムと同じ、デイヴ・ブロック(G/Vo)、ヒュー・ロイド・ラントン(G/Vo)、ハーヴィー・ベインブリッジ(Key/Vo)、アラン・デイヴィ(B/Vo)、ダニー・トンプソン(Dr)の5人。実際はムアコックが朗読で参加していました。ステージではダンサーのトニー・クレラール、クリス・テイトらがエルリックやザロジニアに扮して怪しげなパフォーマンスを繰り広げました。
黒剣の楽曲に加えてアルバムに収録されていない新曲も聴く事ができます。また定番過去曲も挟む形となっています。
オープニングはシンセ・シークエンスにブロックの「Welcome to the chronicle of the balsck sword」という台詞から開始。本来はこの後ムアコックの朗読が入りますがカット。黒剣1曲目である「Song Of The Sword」、最初から飛ばしていきます。
Dragons And Fables 間髪入れずにアルバム未収のラントン曲。ギターリフにシンセが絡むラントンっぽいカッコ良い曲。リードボーカルも本人。ムアコックがライブではラントンの曲が良かったと語っています。
ベインブリッジによるナレーションを挟んでラントン曲「Sea King」。同じく本人がボーカル。
Angels Of Death 前曲が終わるや否やライブ定番曲。実際は間にムアコックのナレーションが入りますが、このアルバムでは編集で間髪入れずに繋いでおり、これが結構カッコイイです。演奏はアゲアゲの突っ走り。
B面最初の曲はベインブリッジのシンセ曲「Shade Gate」。アルバム同様重厚なシンセ群とサスティン・ギターによるシンフォロック。
Rocky Path アルバム『ソニック・アタック』(1981)のラントン曲。ストリングス・シンセが壮大な光景を描きます。
ブロックのナレーションの後、ベインブリッジとデイヴィ作のインスト『Pulsing Cavern』。ベースのアルペジオにシンセソロによる静かな情景。
Master Of The Universe 定番ハードナンバー。ラントンのギターが冴え渡ります。ボーカルはブロック。
Dreaming City アルバム未収曲。エルリックがかつてその王であったメルニボネの都イムルイルのこと。そこの住民は怪しげな薬で快楽に浸りきっていたという(ドラッグですね)退廃的な都です。ラントン夫妻による曲。スローテンポのブルーズ。ボーカルはラントン。
Choose Your Masques 同題アルバム(1982)から。ブロックのリードボーカル、原曲同様アップテンポの緊迫感のある演奏。
Flight Sequence 続けてシンセベースの上で電子音、ノイズ、SEが続きます。
バスドラに続いてギターリフ「Needle Gun」もスタジオ・テイクを凌ぐ乗りまくった好演。ブロックのリドボーカル。実際はこの曲は終盤に演奏されていましたが、このアルバムでは前に移動された構成になっています。
Zarozinia 前曲同様シングルカットされた曲。打って変わってバラード調。ブロックのボーカル。
Lords Of Chaos アルバム未収曲。エルリックと混沌の王アリオクとのやりとり。ブロック、ベインブリッジ作。
The Dark Lords アルバム未収曲。全曲からの流れ。同じくブロック、ベインブリッジ作。
Wizard Of Pan Tang エルリックの仇敵、パン・タン出身のセレブ・カーナのこと。アップテンポのビートでギターソロ。フェードアウト。
Moonglum 哀愁漂うカッコいいラントンの曲ですが、ムーングラムとはエルリックと冒険を共にする頼もしいパートナー(英雄の介添者)。歌のサビではセレブ・カーナやマイシェラ、イシャーナ女王の名前が出てきます。
Elric The Enchanter アルバムでは前半はブロックの歌ものですが、ライブではその部分はカットされ後半のストイックな進行部分のみ演奏されます。リードボーカルはデイヴィ。
Conjuration Of Magnu 「マグヌー」はアルバム『絶体絶命』の曲ですが、その導入となるボイス・パフォーマンス。ベースフレーズがデビューアルバムの「パラノイア」です。
Magnu ライブでよく演奏される定番、ムアコック繋がりで『絶体絶命』ナンバーを演奏するところは心憎いですね。
Dust Of Time アルバム『レヴィテイション』から。この時期にこの選曲は珍しいですが、終盤に向けての流れの中ではフィットしています。
Horn Of Fate 黒剣アルバムでは「Horn Of Destiny」というタイトルで終曲でした。ライブでも終曲に持ってきています。エンディングにふさわしくSEや叫びなどで盛り上がります。なおのちのリリースでは「Horn Of Fate (Destiny)」とクレジットされるようになります。
このリリースでは、ライブで演奏された全ての曲は含まれていませんが、十分にその魅力が味わえる内容だと思います。
この後、92年にCASTLEから初CD化されますが、LPと同じ内容でした。そしてムアコックの出演部分や未収録だった曲などが追補された2枚組CD『LIVE CHRONICLES』は米国のGRIFFIN MUSICから94年にリリースされました。
GRIFFIN MUSIC - GCDHA-0136-2 1 (1994)


カバーイラストは小説「薔薇の復讐』の表紙絵を流用。作者はロバート・グッド。ブックレット、小説「夢見る都」の再版が添付。

CDのデザインも混沌の矢印や宇宙の天秤をあしらったもの。

DISC 1
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DISC 2
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このリリースでは、ムアコック参加部分に加えて、未収だった楽曲2曲が補完されています。DISC 2の「Assault And Battery」と「Sleep Of A Thousand Tears」です。なおこの2曲はアルバム『THE CHRONICLE OF THE BLACK SWORD』からシングルカットされた「Zarozinia」の12インチシングルに納められていました。
「Assault And Battery」は『絶体絶命』のオープニング曲ですが、「Madnu』同様ムアコック・コンセプトの名作『絶体絶命』の数曲を挟むことでより充実した内容になっています。
「Sleep Of A Thousand Tears」は黒剣アルバムの曲。
しかしながら、これでもコンサートの全ての曲は網羅されていません。実際には「Moonglum」の前に『Brainstorm」が演奏されています。またアンコールでは「Coded Languages」「Born To Go」「Arrival In Utopia」「Levitation」がメドレー演奏されています。これらの未収トラックについては、後にリリースされるビデオ作品 に映像と共に収録されます。
こだわりのGRIFFIN MUSICらしくブックレットには各曲の歌詞が掲載され、エルリックの『夢見る都』(Dreaming City) の小説が付属していました。
この後ATOMHENGEからも同様の内容で2009年にリリースされています。
・ATOMHENGEからリリースされた『LIVE CHRONICLES』のレビュー
・上記ATOMHENGE版の国内盤『ライヴ・クロニクルズ(完全版)』のレビュー
・このアルバムの映像作品『THE CHRONICLE OF THE BLACK SWORD』のレビュー
・EXILESさんのLIVE CHRONICLESレビュー
・EXILESさんのLIVE CHRONICLES GRIFFIN - 2CD SETレビュー
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2025/06/16 update